コンサル事例 住宅ローン破綻編

「住宅ローン破綻」とは?

自宅の購入は不動産投資と同じ?

分譲住宅の購入を検討される方に、是非読んでいただきたいお話です。

 

 

コロナショックによる「住宅ローン破綻」が話題にあがります。

新型コロナウィルスの様々な影響により収入がダウン。住宅ローンの返済が厳しくなり、滞納が発生してしまうと、優遇金利の適用が無くなってしまう場合があります。

住宅ローンを組んでいる場合、優遇金利が適用されて、低い金利による返済で済んでいる場合が多くあるのですが、その認識を持っていない方々が多くあります。

返済が滞ることにより、適用金利が上がり、結果として返済額が増えてしまい、ますます状況が悪化。最悪の場合、任意売却や競売にまで陥ってしまう、そのような問題です。

 

総務省による「平成30年住宅・土地統計調査」によると、我が国の持ち家住宅率は61.2%にも上ります。

もちろん、ローンを組まずに購入したり、親から譲り受けたりと、全員がローンを組んでいるわけではないと思いますが、多くの方々は住宅ローンを組んで自宅を購入しているのではないかと思います。

 

 

これまでお話しした「不動産投資」というと、資産家による特別な投資であり、自分には縁のない話だと考える方も多くいらっしゃると思います。

しかし、そのように考える方の中にも、自宅を住宅ローンで購入されている方は、多くいるのではないでしょうか。

今回は、多くの方々にとって身近な住宅ローンを組んだ方からの相談についてお話ししたいと思います。

1%を切るような超低金利での住宅ローンが当たり前となっている昨今、住宅ローンによる自宅の購入は、実は「不動産投資」と同じようなリスクをはらんでいる事を知っていただきたいと思います。

 

 

 

今回の相談者である成田さん(仮名)は、4人家族でごく一般的な企業のサラリーマンでした。

成田さんは、日々仕事に邁進し、順調にキャリアを重ねて収入も増加、ご家族も増えた30代で、分譲マンションを35年ローンで購入されました。

しかし、マンション購入後20年少々が経過した頃、様々なご事情により、残念ながらご離婚される事となってしまいました。

ご離婚により、ご家族は住宅ローンを組んだ自宅から離れて暮らすようになりました。その結果、成田さんはご自身が住まう自宅の住宅ローンの他に、お子様の養育費の負担が発生してしまい、家計の収支がマイナスになってしまいました。

成田さんは、継続的な養育費の支払いを考えて、思い入れが強い自宅でしたが意を決して売却を考えました。

売却したお金を貯金しつつ、住宅ローンの負担を減らし、ご自身はもう少し負担の少ない賃貸住宅に移り住んで収支をプラスにしようと考えました。

成田さんが考えたように、順調に事は運びませんでした。

購入した自宅は、ご自身の収入の中で無理のないエリアで、通勤時間など、いくつかのご夫婦での指標をもとに選んでいました。多くの方々が同じように選ばれると思います。

しかし、ご夫婦の指標で選んだ新築のマンションですが、購入後10数年後には、大幅に値下がりしてしまっておりました。

成田さんは、お仕事が車での通勤であった為、駅からの距離は気にせずに、お部屋の数や広さ、設備を重視してマンションを購入していました。

それから20数年の間に、魅力的なマンションがもっと駅近くに多く建築されてしまいました。結果、相対的に成田さんが選んだマンションの魅力の低下が著しくなってしまいました。

成田さんの見る目がなかったわけではなく、そもそも、夢のマイホームを購入される場合、プライスレスな理想の住まいを家族で追求する事が一般的で、将来的に売却する事を考えた物件選びをする方は少ないのではないかと思います。

 

 

 

売買専門の不動産会社に相談に訪問した成田さんは、現実を突きつけられてしまいます。

20数年支払って、現在残っている住宅ローン残高に対して、売却できる金額は大幅に下回っていたのです。売却するためには、住宅ローンを完済して、金融機関の抵当権を抹消しなければなりません。

これは、マンションを売却するためには、不足するお金を支払わなければ売却できない事を意味します。売却できる金額を楽観的に考えても、支払わなければならない金額は数百万円の後半にのぼりました。

現在のまま、住宅ローンと養育費を支払い続ける事も出来ず、かといって、売却する事もできず、成田さんは八方ふさがりになってしまいました。

 

 

 

偶然にも、その売買を専門とする不動産業者の担当者と面識のあった私に相談の依頼がありました。

 

不動産業者の担当者

「相談にのってもらいたいお客様がいます。マンションを売らなければならない事情があるものの、オーバーローンとなっていて、売ることができない状況です。このまま時間が経過すると、ローンが支払えなくなり、競売にかけられてしまうかもしれません。一時的に賃貸に出すなど、何とかならないでしょうか?」

 

成田さん

「家族にとって、一番良いマンションと思って購入したところ、価値が現在は大きく下がってしまっているそうです。私にはどうしたら良いかわかりません。」

個人宅における不動産の有効活用についてのコンサルティングを受託しました。

 

 

 

まず、成田さんがマンションを売却できる可能性があるかを再度、私なりに考えました。

 

1、オーバーローンとなっている分を何とか補填して、売却をすすめる。

 

2、お部屋をリフォームなどにより手を加えて、ローンの残高以上の金額で売却できるようする。

 

 

 

もちろん、不動産売買の専門家が検討を重ねており、どちらもダメでした。

オーバーローン分を借りる事はかなわず、毎月の家計の赤字により、お部屋に投資する金額は残っていませんでした。

そうなると、残された手立ては、賃貸に出して少しずつでもローンを返済して、売却できるように少しずつもっていくしかありません。

 

賃貸する事が可能か、物件調査を行いました。

多少築年数が経過していても、そこは分譲マンションです。建具や設備を含むマンションの仕様を比較すると、同程度の築年数の賃貸住宅よりも魅力はありました。

しかし、楽観的にはなれません。賃貸に出すには、20数年住んだままの現況では貸し出せません。

また、毎月のローン返済、修繕積立金、マンション管理費、固定資産税が捻出できるのかを検討しなければなりません。

それだけではありません。成田さんの現在住まいを貸してしまうのです。成田さんご自身の住まいも別に用意しなければなりません。

 

 

貸し出すための準備として、現地調査の結果を基に、慎重に家賃の査定を行いました。

状況を鑑みれば、高く貸したい気持ちは山々です。

しかし、楽観的に高い家賃設定を行ってしまっては、借り手がつかなかったり、貸すのに時間がかかったりしてしまいます。

そのなると成田さんは破綻してしまいます。

一方、安い家賃設定で貸しては、借り手がついても毎月が赤字になってしまいます。

 

 

平行して、貸し出すためのお部屋の準備を整えます。年数のわりに丁寧にお部屋が使われていたことも幸いしました。

成田さんとリフォームの予算について相談し、かかる費用に最低限に抑える事としました。最低限の判断も難しい所ですが、少なくとも清潔でない住宅には誰もが住みたくありません。プロによる室内のクリーニングは絶対に必要であることをご理解いただき、著しく痛んでいる部位のみ壁紙の貼り替えを行う事としました。

 

マンションを貸し出す計画がたったところで、成田さんの引っ越し先を確保します。

これまでの分譲マンション暮らしから比較すると窮屈になってしまいますが、通勤先への利便性を重視したミニマム予算の住宅へと引越しが決まりました。

 

引越し先が決まって契約すると同時に、賃貸の募集をスタートしました。ここからは、ローンと引越し先の家賃が二重にかかってしまう為、スピード勝負です。

 

 

程なくして、マンションを借りてくださる方が見つかりました。

お部屋のリフォームを基本的には行っていなかったので、表層を汚しても壁紙の貼り換え代金は頂かないとご案内した事が功を奏しました。

明るく小さなお子様のいるご家族だったため、安心して汚せると、前向きに捉えてもらう事ができました。

 

 

何とか成田さんのご希望に沿った計画通りに事が運びました。

とはいっても、残念ながら、家賃収入でマンションを所有している出費を全て賄う事は出来ませんでした。しかし、ご自身の給料に家賃収入が加わることにより、ご自身の単身向けの家賃を支払ったとしても、何とか養育費とローンを支払う事ができるようになりました。

 

 

成田さん

「マンションを購入する際に、離婚をする事、売ならければならない事態に陥る事、さらには、売る事もできずに、まさか貸しに出さなければならないとは考えもしませんでした。」

 

成田さんは改めて考えながら仰います。

「新築で購入して、35年の住宅ローンを組んだことも、毎月家賃を支払うような感覚しか持っていませんでした。なので、今いくらくらいローンが残っているのかなど、考えたこともありませんでした。また、買ってしまった後のマンションの価値は、気になる事もありましたが、怖さ半分、面倒半分で全く気にかけずに過ごしてきてしまいました。」

 

成田さんだけではありません。ローンを組んだ住宅購入後は、やり直しがきかないからと、考えないようにする方が多くいらっしゃいます。

 

成田さん

「想定外だらけなのに、私自身はご協力いただけたことにより、結果として運よく借りて頂けた事により、住宅ローン破綻にならずにすみました。」

「しかし、本来、何千万円もの借金を負う事が簡単なはずはないのに、そのことを真剣に考えずに、35年の住宅ローンを組むことは当たり前で、誰でも通る道なのだと深く考えずに過ごしていました。」

 

 

家は消耗品ではありません。多くの人にとって、人生で購入するものの中で一番大きな資産なのです。

このコラムを読んでくださっている方々で、もし住宅ローンで自宅を購入する場合、自分で住まう自宅といえども、不動産の購入は「リスクのある投資である」という意識を持っていただきたいと思います。

家よりも一桁小さな自動車では、中古で売ることを考えて手入れを良くする方、値段が落ちる前に買い替えるようと積極的にプランニングする方もあります。

 

 

しかし、不動産、特に家となると、途端に思考が停止してしまう方が多く見受けられます。成田さんのような不測の事態は、種類は様々なれども、誰にでも起こり得るのです。ご自身でそのつもりがある方などありません。

天災地変、子育て、離婚、転勤、転職、介護と35年安定して同じところに住み続けられる保証は誰にもありません。

 

そして、たとえ不測の事態なく、35年を過ごす事が出来た場合であったとしても、立地を含む物件の選び方次第によっては、同じ価格で買った物件の価値が優に数百万円を超える差が生まれてしまう事も多々あるのです。

 

住宅ローンの恐ろしさは35年の間のいずれか、どのようなタイミングであってもご自身で想定をしておいて、その金額以上で売却が可能でなければ、人生が傾く可能性があるのです。

もちろん、35年のローンが終わった後も、より大きな価値があれば第2の人生を有意義に過ごす事ができる糧になり得ます。

 

 

 

もし、所有する不動産でお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。困っている不動産オーナーと二人三脚で歩むことはグラムコンサルティングの役割であると考えております。

不動産が負の資産とならぬように、私達と一緒に不動産資産を人生にとって最大限有効活用できるように歩んで参りましょう。