コンサル事例 4つの提案 収益物件の再生編2

大家業は、何もせずにお金が入ってくる、理想の職業!

友人の実家が大家業で良い話ばかり聞いていた私は、就職活動中だった学生の頃、そんな風に不動産賃貸業を営むことを羨んでいました。

今回ご紹介するお客様は、親御さんから複数の賃貸不動産を譲り受けた横山(仮名)さんです。

 

ある日、私が昔からお世話になっている不動産業で大先輩の河辺さんから電話がありました。河辺さんは、ある街で有力な老舗不動産業者の役員だった方です。

 

河辺さん

「私の昔からのお客さんの賃貸物件について、相談に乗ってほしいんだ。

私が親しくしていたのは、親父さんの代なんだけど、息子さんにバトンタッチしてから、どうやら賃貸経営が上手くいってないらしい。

うちの会社の担当者たちに頑張るように檄を飛ばしたんだけど、まったくダメなんだ。そして、とうとう、さじを投げてしまったようなんだ。」

 

私は聞きました。

「何かの事故があったとか、物凄く古くて手入れが悪いなど、お客様が入らない理由があるのですか?」

 

河辺さん

「それが、特にないんだ。ターミナル駅からも徒歩5分程度だし、物件もそんなに古くないし、間取りもいい。でも全くダメで、今はとうとうお客さんが一人も入っていないんだ。担当者に理由を聞くんだけど、明確な答えが返ってこない。

彼の親父さんには大変にお世話になったから、何とか助けてあげて欲しいんだ。」

 

私は、河辺さんと一緒に横山さんを訪ねる事になりました。

初めてお会いした横山さんは、物静かでとても真面目な雰囲気の漂う方で、話した内容を一言一句漏らさずにメモをとっていました。

横山さんからは、河辺さんから聞いた内容とほぼ同じ内容を聞きました。

 

「物件に何か悪い事があるのならば言ってほしいと、これまで不動産屋さんにはお話ししていました。また賃貸条件についても、不動産屋さんが設定した条件で募集をしてもらっていたのですが、それでも誰も入ってくれないのです。なぜ入らないのか、私が教えて貰いたいです。是非、お客様が入るマンションにかえてください。」

空室改善のコンサルティング契約を受託しました。

 

物件を確認しました。中を確認してみても、大きな問題はありません。鉄筋コンクリート造4階建て、エレベーターやオートロックもあります。間取りはファミリータイプでリビングは10畳以上あり、人気がある間取りです。

弱点があるとすれば、駅から近いが故に、物件が繁華街にあるために、落ち着いた環境ではない事位でした。

ただし、長い期間空室となった物件には、負のオーラが漂ってしまいます。

負のオーラなどというと、非科学的に感じられる方もあると思いますが、実際にいくつもの形となって現れます。

前の入居者が退去した後にルームクリーニングをしてあるのですが、時間の経過で埃っぽくなってしまいます。また、排水管が乾いてしまう事により、下水道の臭気が漂ってしまいます。人が出入りしない事で、物件全体の空気も滞留して空き家感が出てしまいます。

それだけではありません。転居先を探している方が、誰一人住んでいない物件をみたら、何かあったに違いないと穿った見方をしてしまうものです。

また、お客様が感じる以前に、お客様を紹介する不動産会社の営業担当者自体が様々な見方をしてしまいます。

たくさん部屋が空いている物件だから、焦って決める必要は無い物件だと思う事もありますが、それ以上に、あんなに空いてしまっている物件であれば、お客様を紹介しても無駄骨に終わってしまうだろうからと敬遠してしまう事さえあります。

 

市場調査

物件の調査が一段落し、続いてライバル状況を調査しました。

これまで募集していた条件を確認しました。その街の老舗不動産業者が提案していた家賃設定だけあって、相場に沿った設定となっておりました。

 

いろいろな状況を確認したうえで、横山さんに満室化対策を4つ提案しました。

  1. 一歩、踏み込んだ家賃設定
  2. 空き家感の除去
  3. ステージングによる魅力創出
  4. 募集方法の工夫

 

それでは、一つずつ見ていきましょう。

 

一歩、踏み込んだ家賃設定

これまで募集していた老舗の不動産会社の設定は相場に沿ったものでした。

しかし、たとえ同じ築年数で同じスペックの物件であっても、いわゆる「負のオーラ」をまとってしまった物件は、同じ条件ではなかなか結果が出難いものです。お客様も不動産業者も、いつも募集している物件として、見向きもしなくなってしまいます。

一番ハードルの高い1人目のお客様を見つけるための思い切った家賃設定を提案しました。

 

空き家感除去

先ほどお話しした、長い事空き家になってしまった物件は、条件の変更をして広告に力を入れて、物件をそのままの状態でお客様をご案内しても、悪い印象をこれまで以上に広めてしまう事になりかねません。

全室リフォーム済みではありましたが、再度になってしまいますが、物件クリーニングの実施を提案しました。

 

「ステージング」による魅力創出

簡単にホームステージングについて説明します。

ステージングとは、分譲マンションの販売所のように、お部屋をモデルルーム化する事です。

現代の賃貸募集において、インターネット広告に掲出する写真でいかにお部屋を魅力的に魅せるかは非常に重要な要素です。

賃貸募集するお部屋は、キレイな事は当たり前です。不動産募集サイトをみると、間取りの違いはあれど、どのお部屋も白い壁紙で床はフローリングのものだらけです。

新築時やリフォーム実施時であれば、様々に工夫をして、例えばデザイナーズ物件として特徴を出す事は可能です。しかし、今回のようにリフォームが済んでいる物件を特徴化しようとして、再度リフォームをし直す事は無駄です。そこで、後から飾ることのできる家具を用いて部屋の魅力を引き出します。

 

ステージングには、いくつかの手法や様々な効果があります。そんな中で事前に横山さんの希望を伺い、家賃収入がないために、必要最小限の投資で効果がある方法との事でした。そこで、インテリアプランナーと相談して、いくつかの家具をセレクトし、3部屋分のプランを作成しました。予算として一部屋あたり半月分程度から一カ月分の家賃で収まるようなプランとしました。

 

募集方法の工夫

以前のコラムでも書きましたが、同じ物件内で同じ間取の部屋を同時に募集してしまう事は、数学的な可能性は最大化できるのですが、時として制約の可能性を狭めてしまう場合があります。フロアごと、タイプごとに区分して先行して募集するのは、半分とする事を提案しました。

 

横山さんに4つの提案を説明しました。

横山さんは、静かにメモを取り、説明を聞いて下さったあと、質問や意見などがありました。

家賃については、ご自身でもライバル物件の金額を調べていて、あまり低い金額では出したくないとの希望がありました。

空き家感の除去について、一部破損した設備などの交換には目をつぶって後回しとして、簡易のクリーニングのみ承諾を得られました。

ステージングについて、予算の面からある程度品物を絞ることとしました。

その中で横山さんも外から物件を見たときの寂しさをとても感じていたとのお話しがありました。周辺からみたときの印象も良くしたいとの事で、通りに面したお部屋にカーテンをかける事にしました。またお部屋に入ってきたときに暗くないようにデザインされた照明、あとは部屋ごとにいくつかの家具を置くことにしました。

募集方法については、プロの意見に任せるとの事で、そのままご承諾頂きました。

最後に、逐次とられているメモを見返しながら、今決めた事柄を復唱されて、これでよいですね、と確認をされたので、はい、どうぞよろしくお願い致しますと返しました。

 

すべての計画が整いました。

クリーニングや家具の手配を進めました。作業が完成したところで、広告を作成して募集を開始しました。横山さんからは、数年間空いたままだったとの事で、とても期待しているとの言葉がありました。

一方、私自身は、様々に検討した提案通りの内容での募集でなかったこともあり、期待半分、心配半分でのスタートでした。

 

募集を開始して、インターネットの反響や不動産業者さんからの問い合わせの数を確認していきました。ライバル物件と比較すると、高いスペックの物件で、家賃もそこそこの設定である事もあり、反響がすぐには高くはなりませんでした。

 

1カ月程度経過して、状況報告を兼ねて横山さんと打ち合わせを行いました。

高い反響ではないものの、そこそこの数値ではあったので、その事のご報告をしました。また、お部屋の中はキレイにできたのですが、マンションの玄関周りに少々問題がある事をお話ししていました。横山さんの事務所が隣接していることもあり、使用されていないプランターや植木鉢があり、その他にもアスファルトに苔が少々目立っていた事です。まだ改善されていなかったこともあり、再度改善のお願いをしました。

 

募集から2カ月程度が経過しました。

時期にもよるのですが、通常改善提案を行った物件は、2~3カ月あれば、何らかの手ごたえが出てくるものです。しかし、今回の横山さんの物件は2カ月が経過して、インターネットでの反響はそこそこあるものの、お部屋の内見は一件も入りませんでした。

 

 

私自身も焦る気持ちを抑えながら、横山さんに現在の状況の報告をしました。横山さんも不安な気持ちが大きくなってきているのを感じました。

 

横山さんは以前にご自身でとったメモを見ながら仰いました。

「私は全部あなたが提案されて、決めた内容を全て行いました。なぜきまらないのですか?」

 

私は率直な感想を言いました。

「長期間空いてしまっていた弊害が、考えていた以上に大きいようでした。通常紹介してくださるような近隣の不動産業者さんの紹介してくださる数がとても少ないのです。少し成約が進むまで、やはりもう少し家賃を落とした方が良かったかもしれません。」

 

賃貸の募集に絶対はありません。貸室を押し売りすることは出来ないのです。空室を改善するには、確率を可能な限り上げていく事しかできません。

あるいは、サブリースのような方法で、儲け分とリスクをサブリース会社に渡してしまうような方法を取るかです。

そのような事を含めて、改めて私は横山さんに丁寧にご説明しました。

 

いつも冷静な横山さんは、少し興奮されている様子でした。

「私は、あなたの言う事を信じて、決まるどうかがわからない投資をしました。家賃の設定について、私なりの意見も出しましたが、最終的にあなたはうんと言いましたよね。

一方、あなたは決まらなくても何の負担もありません。部屋が決まらなかったら、投資分はあなたが負担するべきではないですか?」

 

もちろん、私はすべてをスタートする前に、成約のリスクや横山さんのご負担については丁寧に説明をしています。

興奮されている横山さんとお話をしながら、これまでの不動産業者さんが匙を投げてしまった原因は、このあたりの横山さんの考え方や気性にあるのだなと感じました。

しかし、横山さんがそのような考え方や疑心暗鬼が生じてしまったのも、すぐに匙を投げてしまう不動産業者さんが多かったからなのかもしれません。

 

お話しされている様子から、簡単にすぐ決まるものではない事は分っていて、それでも心配な気持ちをそのような言い方で表現されているのだなと感じました。

結局、その日は少しギクシャクしたまま話を終えました。

 

横山さんとお話をした翌週から、待っていたかのように、お客様からの反響が入りだしました。まず内見が入り、その翌週には待望の入居申し込みが入りました。私はとても嬉しくなり、横山さんに電話を入れました。

いつも通り冷静な横山さんでしたが、とても控えめな口調で「ありがとうございます。」とお礼の言葉を頂けました。

 

1件の申し込みが入ると、2件目からは大分ハードルが下がります。

募集図面は全部空白ではなく、成約済が入るのです。2件目の申し込みが入ると、募集を控えていたもう半分の募集の準備を進めました。ここからはテンポよくお部屋が埋まっていきました。賃貸経営には負のスパイラルがありますが、その逆もあります。勢いがつくと、どんどんと良い方向に転がりだすものです。

 

あっという間に満室となりました。これまで全室空室だったことが嘘のようです。

満室となった事で、これまでできていなかった設備の点検や建物の修繕計画を練る事ができるようになりました。入居者さんが安心安全に長く暮らしていける物件にしなければなりませんん。ここからが賃貸経営の本当のスタートです。

 

募集段階では、空室にカーテンをかけていましたが、今はカーテンだけでなく、人が住まう声や光が漏れる活気あふれるマンションに生まれ変わりました。

横山さんは表面的には初めと変わりません。いつも冷静で細かにメモを取ります。しかし、お話くださる言葉に安心や信頼を感じるようになりました。

 

私が行った中でも、今回のコンサルティングは印象深いものでした。

不動産は高額な資産であり、現金や貴金属、債券等と違って隠しておくことができず、誰もが法務局で謄本をとれば所有者が分かってしまいます。

そのために、収益不動産を所有していると、不動産業者、建築業者、金融機関から、さまざまな営業にあったり、勧誘に伴う疑心暗鬼を生じさせるような話を聞かされたりしてしまうものです。

不動産業者であれば売買、建築業者であれば建て替えなど、営業してくる相手によって、その目的が違うので、もっともらしく話される内容も変わってきてしまいます。

そんな中で、話半分で聞いていても、少しずつ不信や不安は拡大していってしまうのです。

 

もし不動産経営でお困りになる事がありましたら、お気軽にご相談ください。

グラム株式会社

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